ハードル

 朝夕の北千住駅は通勤客の乗換え駅であり、いっぱいの人であふれている。〇も例に漏れず通勤都民の一人なのである。北千住駅構内はかなり複雑で、初めての人は戸惑うことが多いだろう。

 今日の夕方、たまに見かける白杖の男性(名前は知らないのでAさんとしておこう)を見かけた。どの駅から乗車してどの駅で降りるのか〇は知る由もないが、JR線と東武スカイツリー線を使っているのは確かである。

 ○(&Aさん)が降りたJR常磐線は10両編成だった。JR常磐線は車両構成が複雑である。10両編成と15両編成があり、更には青色電車にはグリーン車が2両もついているが、緑の電車にはグリーン車はない。乗るときにはいちいちそんなことは気にしないし、来た電車に飛び乗るだけだし。たまにグリーン車の位置だとあわてて違う車輌に移動する。

 で、JR北千住駅でホームに降りた時に「ありゃ、10両編成だったか」とガッカリするのである。なぜならこの後の乗り換えに便利なのは北口改札に近いほうなのだから。で、トボトボとホームを歩いていると、前方にAさんを認めた。あれ?Aさんも乗る電車の編成を間違えたのかな?と思いながら後ろを着いて行った。Aさんは点字ブロックに沿って白杖をつきながらゆっくり歩いている。左手が何かにぶつからないようにいつも前方に出されている。他の乗客がだいたい倍ぐらいのスピードでAさんを追い抜いて行くし、前からも沢山の人が来る。もしぶつかったりしたらホームに転落の危険さえある。ちょっと危ないなと感じた。


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 ○はとっさにAさんの横に並び「僕につかまっていいですよ」と言っていた。

 この一声を発するまでどれだけかかったんだろう。半年ぐらいはかかったかもしれない。見かけるたびに声をかけようと思っていたが、
 「大丈夫です、一人で歩けます」
 「余計なお世話でしょ」
 とか言われたらどうしよう、と思ったので声をかけるのを躊躇していた。

 でも、Aさんは怪訝な顔もせず「あ、どうもすみません」と言って、白杖を持っていない左手で僕の右肩あたりにそっと触れてきた。なんだ、Aさんこういうの慣れているんだ。ほっ。

 後は歩きながら自然と会話もできた。
 Aさん:「北口改札から出ますけど」
 〇  :「大丈夫です。ときどき見かけますから。でもいつも一人でスゴイですね」
 Aさん:「いえいえ。慣れていますから」
 〇  :「今の電車は10両ですから前方まで歩きますよ」
 Aさん:「ええ、わかっています」
 〇  :「階段を使いますか、それともエスカレータで上がりますか」
 Aさん「「エスカレータで上がります」
  階段に向かってホームの端を歩いていたが急にエスカレータ方向に進路変更。

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 ○:「JR常磐線は10両編成と15両編成があって混乱するでしょう」
 Aさん:「それはいいんですが、電車が遅延するとホームが変更になるんですよ。」
 ○:「あぁ、2番線のはずが3番線に変更になったりですね」
 Aさん:「そうなんですよ、2番線は行き先が全く逆の電車が来るんです」
 ○:「健常者でも乗り間違えするんですよ」

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 JR改札口を出て、点字ブロックに沿って、真っ直ぐに進んだり、いったん停止したりしながら、つくばエクスプレスの改札前を通過。点字ブロックに従って進んでいたら、階段だった。Aさんはいつもはスロープを歩いているらしく、一瞬「え?」と立ち止まってしまった。〇が「あ、ここから階段です3段ですから」というと白杖で確認しながら降りてくれた。

 最後は東武線だ。てっきり準急かと思って1番線(1階)に降りようとしたら、Aさんが「5番線から乗るんですけど」(5番線は3階に上る)と言われて、あわてて進路変更、無事に階上に連れて行くことができた。「じゃ、気をつけて」ここで別れた。

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 これまで、ボランティア講習会でマラソン伴走の心得みたいな講義を受けてきたし、どういうふうに接すれば自然に受け入れてもらえるかというのは頭では理解できていた。今回はそれが役に立ったと思う。自然に体が反応した。

 ・曲がる手前で「○m先、右に曲がります」
 ・階段の手前では一旦止まり「階段です」
 ・「改札です」
 ・エスカレータでも一旦止まる「エスカレータです」
 なんてことはないですね。
 ただ、改札の時にはちょっと待ってあげないと、定期券を取り出したりタッチするのにちょっと時間がかかる。

 でも、これで自信がついた。思い切って声をかけてよかったなと思った。
 またこういった人がいたら今度は躊躇せずに肩を貸してあげることができそう。

 しかし、こういう複雑な構成の駅を毎日一人で通勤しているAさんはスゴイ。振替輸送なんかの時は困るだろうな。

 今日のハードルは低かった。(^^)v


この記事へのコメント

異邦人
2013年07月06日 15:22
~☆ 〇さんへ ☆~
〇さん偉いなぁ~。話しかけることなかなか出来ないよ。
掛けるまでの〇さんの心境察しました。
Aさんは何でも分かっているんですね。ここまで来るのに
どんだけ苦労した事やら~。でもAさんは〇さんのことは忘れないでしょうね。
〇さんに脱帽です。出来そうでなかなか出来ないっす。
2013年07月06日 18:03
>異邦人さん
 ○の心境を察して頂きありがとうございます。
 これまでも、何度声をかけようかと思ってやっぱり思いとどまった苦い経験があります。今回は無意識のうちに反応していました。

 マラソンの伴走のように走る前に顔合わせ、とかないので余計に不安です。
miya
2013年07月06日 18:55
〇さん、エライ!
声をかけるのって、本当に勇気がいりますよね。こういうところでもマラソンのボランティア講習が役に立つんですね。
見習いたいと思います。
2013年07月06日 19:04
>Miyaさん
 普通、声をかけるというところまで行かなくて後悔するんですよね。
 昨日は体が自然に反応していました。

 12月22日の「クリスマスイブラン」(皇居)では、講習会の後、実際に視覚障害者の方と一緒に走ることができますので是非どうぞ。また懇親会でも一緒に飲食します。

 あ、東京マラソンの「ボランティアリーダー講習会」に申し込みました。うん、来年は抽選外れだと思っています。当たったらどうしよう。(^^ゞ
momomo
2013年07月07日 02:33
○さん、こんばんは。

こういう方に声をかけるのって、けっこう勇気がいりますよね。
ぼくも躊躇したままずるずるということが多いです。
知らない人に声をかけること自体、はばかられる世の中ですが、
ぜひ○さんに見習おうと思います。
当たり前といえば当たり前だけど、とてもステキな話でした。
2013年07月07日 23:44
 やっぱり、みなさんも経験あるんですね。しかも声を掛けれなかったという。(^^ゞ
 電車の中で「携帯電話の電源を切れ」っという人も偉いと思いますね。
 その話は次回にしましょう。

レン
2013年07月08日 10:09
体が自然に反応した、素晴らしいです。
講習会のことがちゃんと実践できて偉いです。
それ以前、声をかけられたことも偉いですね。
  レンもなかなか声をかけられません。
  赤ちゃん連れのお母さんだったらかけられるんですが。
   
そうか、肩を貸して差し上げるのですね。
ホノルルで伴走者の肩につかまって走っている方もありました。
2013年07月08日 23:08
>レンさん
 なんと、今日もAさんと遭遇しました。
 やっぱり自然と肩が出ましたヨ。
 「どうぞ」
 「あ、はいどうも」
 てな感じでした。が、今日は改札入ったら「後は大丈夫ですから」といって、一人で階段を降りて湯いきました。さすが、慣れてる!

 マラソンの時は、輪っかのほうが走りやすいですよね。